綴られる物語 18


その部屋に、キィと言う音が響く。
少し乱暴に開かれたそのドアは、そこから一人の人を招き入れた。
その入ってきた人物は室内を見回して、イライラと息を吐き出す。
「一体何処に行ったって言うのよ、あの子は…」
落とされたその言葉は、誰の耳にはいることもなく誰もいない室内に響いて消える。
もう一度室内を見回すと、その人物は直ぐに踵を返した。
部屋に、パタンという乾いた音が響き、また静寂がそこを満たす。
今はもう、誰も使われることのない部屋の中。
その中央に、開かれたまま置かれた古びた本があった。
全てのページが埋まっていないその本は。
…─二人の少女の物語を綴っていた。
今もまだ綴られ続けるその本はしかし、次にまた人がこの部屋に訪れたとき。

──その影も残さず姿を消していた。



← Back || Top || Next→