死神狂想曲 2
「レオッ待てよ!!」
少し遠くで叫ぶように引く止める声がした。
良く響く、男の声だ。
そして紛れもなく自信のパートナーである朔夜の声。
「朔夜煩い」
「置いていくからだろうが!!」
取りあえず文句は聞き流すことにした。
朔夜は私のパートナー。
相棒と呼ばれる死神。
フワッと高層ビルの屋上に降り立つ。
「朔夜、今日の仕事の内容は?」
「あっ、ちょっと待て―…」
そう呟きながら昨夜はパラパラと持っていた手帳をめくる。
仕事の情報管理はいつも朔夜だ。
「お、あったあった―…」
「何処?」
「……―今日は俺が一人で行くよ」
その表情は酷く歪められていて、こちらを見る目は心配するような光が宿っている。
恐らく、彼は私に隠したいのだろう。
しかし、私は彼の表情を見なくとも…─―その一言で、どんな内容か解った。
「そう、どんな内容?言って」
「―……中島桜、13歳。18時43分、No.256地区の交差点で信号無視のトラックに跳ねられて直ぐに松田総合病院に運ばれるが死亡。」
「…そう」
思った通りだった。
その述べられた情報は酷く類にしていて。気分が沈む。13歳、それは彼女と同じ…。
しかし戸惑うことは私には許されない事だ。
「…もう時間がないわね、行きましょう」
「レオっ、俺が行くって!」
ゆっくりと朔夜をふり返る。
「大丈夫、行きましょう」
微笑みさえを浮かべた私の表情に朔夜は息を詰まらせた。
「…っ」
苦悩に表情が歪み、しかし直ぐ諦めたように息を吐き出した。
朔夜は私に心配そうな視線を向けながらも、渋々といった感じで一歩を踏み出しす。
「…きつかったら言うんだぞ」
「……えぇ、解ったわ」
朔夜は私を理解してくれている。
でも、ダメなのよ。
このままじゃ。
私も抜け出さなきゃ。
彼女のためだけの仕事じゃダメなの。
それじゃぁ、連れて行く魂が可愛そうだもの。
魂の価値は皆同じ。
最後まで幸せで居られるように、空に導くのが私たちの仕事。
――死神はすべての魂に平等でなくてはいけない。
彼女に縛られて居てはダメなの。
だから、行かなくちゃ。
朔夜に甘えたままじゃ私は進めない。
No.2 死神構想曲―ロンド―
(きっと、ここから抜け出せる日は私が私の存在する意味を見つけられた日だ)
Fin