私と博士と日常と


「ねぇ、ベル?」
「何だ」
私の彼ベルフォアは私の呼びかけに振り向きもせず机に向かって何かを書いている。
―むぅー…。
「つまんない」
「そうか」
「…つまんない」
「そうか」
「……つまんない」
「そうか」
「……おなかすいた」
「そうか」
そうかとしか答えない彼に、苛々する。
―愛しの彼女が来てるのに何この扱い…。
彼…ベルフォアは結構な発明家であり、研究者である。
そんなベルフォアは私を無視して何やってるかは分かんないけど何かに夢中。
手元を覗いてみても魔法陣とか読めない文字とかゴチャゴチャ書いてあってわけ解んないしっ!
…。
「テル何処行ったの?」
「そうか」
「…」
ちなみにテルとはベルフォアがかっている動物である。
何て言う物かは知らないけど見た目は羊に似ている感じ。
―って、完全に聞いて無いし…。
「ベルってばー、話くらい聞いてよっ!!
いつもならかまってくれるのにっ」
「そうか」
「………」
―本気で聞いていないんだろうか…?
…。
「ベルベルベルベルベルベールー」
「……サリア、煩いぞ」
「ベルが相手してくれないからでしょっ!!
折角来てるのにっ」
やっと答えてくれたベルにふくれながらそう言ったら何故か呆れた調子で言われる。
「君にとっての恋愛とは何だ?」
「はぃ?」
いきなり問われマヌケな声を発した。
―何を言い出すの…?
「確かに恋愛はすばらしい物だとは思うが、君は周りをしっかり見えていないだろう?」
「…」
なんだかその一言でとてつもなくバカにされているような気がしてならなかった。
しかし、そんなサリアを気にすることなくべルはベットに座るサリアに近づいていき言う。
「自分の気持ちだけを優先し、周りに配慮していないとは思わないか?
恋愛とは相手を信用し信用され思いやりを持ってする物じゃ無いのか?
相手を配慮し自分の気持ちをぶつけ分かり合う。そう言う物だろう?
…それなのに今の君は自分の気持ちだけで行動し僕のことを考えていない。
仮にも今僕がやっている事は仕事であってやらなければいけないことだ。
今君がしていることはいくら恋人とは言えその妨害であり、僕に対し配慮しきれていないとは思わないか?」
一度も突っかからずスラスラと捲し立てるベル。
ベルにここまで言われたのは初めてだ。
―文句を言いつつ相手はしてくれたし。
心ではそう思って居たのかと少し悲しくなるが、思う。
そこまで言わなくても良いじゃない…。
「……でも、今までは」
「確かに今までは相手をしていたが僕にだって手が離せない
急がなければならないときだってあるとは思わないのか?」
「……」
言い切る前にそう言われ思わず黙る。
―別にここまで責めなくても良いじゃんっ!!
一言言ってくれればあたしだって納得するのにっ!
黙る、私を納得したと取ったのかベルは言う。
「解ったか?ならば大人しくしているんだぞ」
「―…」
悠々とそう言いながら机に戻っていくベル。
―むかつく。何でこう、ベルは上目線なの!!!?
負けっ放しになんかなってやらないんだからっ!
そう思い、ベットから降りてベルの腕を引っ張った。
―ベルは怪訝そうにふり返る。
「―っ…」
「んっ…」
ベルがふり返った瞬間に―…ベルの唇に私のそれを重ねてやった。
―ものっそい恥ずかしいけど。
きっと真っ赤になってるだろうなと自分で思う。
直ぐに離して、逃げてやるつもりだった。
でも―…逃げられない。
不意打ちの筈のキスに動揺することなくベルは腰に腕を回し私を引き寄せてきた。
―な、何で!!?
そのことに軽くパニックを起こす。
そのうちに、私は自分がだんだんベットに押し倒されて居ることに気がつかなかった。
「ンゥッ…チュッ…ッ!!!?」
気づいたときにはベットに押し倒されて居てキスは深くなっていく。
「……ッア…ッも、くる…んっ」
息が続く無く苦しくなった私に気がついたのかベルは惜しげに私から離れていき、二人を繋ぐようにできた銀の糸もプツッと途切れた。
肩で息をし、思いっきり酸素を取り込む。
ベルを睨み、見れば余裕の表情で私を見下ろしていた。
……イヤ若干、楽しんでいるような、いたずらに成功した子供の様な顔をしている。
「かまって欲しいとはこっちの意味だったのか」
「なっ、そ、そんなわけ無いでしょっ!!」
そう否定するがベルはかまわずに、私の首元に顔を埋めた。
―えっ、
「ちょっ、忙しいんじゃないのっ!!?」
「息抜きだ。かまわない」
「まっ――っ!」
待って、と言う前にベルが首筋に吸い付き、チクッと甘い痛みが走る。
―あっ、ちょっまだ昼間なのにっ!!
そう思ったとき、ベルが耳元で呟いた。
「君からキスしてくれる事なんて滅多に無いからな。
据え膳食わぬは男の恥―…だろう?」
「はぁ!!?」
バッと、ベルの顔を見ればさっきと同じ子供がいたずらに成功したような笑みを見せていた。
―まさか―…わざと?
「誘ったのは…君だからな」
「っっはめたでしょ!!?」
そう言えば「さぁ、どうだろうな」何てぬかすベル。
こ、この野郎ぉ!!
そう思っている間にも、ベルは私の服を脱がしに掛かる。
もう、止められない。
―結局今日も、私は策士な博士様の罠にはまり
おいしく食べられてしまうのだった。

恋愛定義を知ってるかい?
(押してダメなら引いてみろだろ?)
(バ、バカーーッ!!)





Main || Top || Index