彼女は女王様
「ちょっと、何ボーとしてんの?」
これは俺の彼女。
つきあい始めて半年になる。
「いや、ぼーっとなんかしてないけど。ただ弁当食ってるだけじゃん!!」
「暇ならジュースでも買ってきてよ」
「いや、だからさ」
「何、文句あるの?」
これは彼女の決め台詞。いや口癖かもしれない。
俺の彼女「里奈」は睨みを利かせている。
「……ありません」
渋々そう言ってジュースを買いに屋上を出た。
思うんだが、俺はパシリとして……
いや、女王様と家来という関係がしっくり来る。
とりあえず恋人とかよりそっちの方に近いと思う。
別に俺がMな訳ではなく、里奈がSすぎるんだ。
俺は里奈が機嫌を損ねたら後が大変だから
言うとおりにしているのであって、
決してMではない!!
ガコンッ音をたてた自動販売機からミルクティを取り出しまた屋上に戻る。
時々、本当に俺のことを好きなのか?と思うときがある。
……日常的にパシルし、本当に家来に近い扱いを受けたら誰だってそう思うんじゃないんだろうか。
でも、その疑問は無いと思える瞬間もある。
ガチャッと屋上のドアを開けて外に出る。
その瞬間に、里奈の声がするのはいつものこと。
「遅い!!」
そう言いながら、台詞とはあわないとっても嬉しそうな顔を俺に向けてくる。
たぶん本人は気づいて無いんだろうけど。
「悪い!ほら、ミルクティ!!」
そう言って、里奈にミルクティを渡したらまた嬉しそうな顔。
これも本人は気づいていないと思う。
「ありがとう」
俺はこの顔を見るのが好きだ。
この瞬間の珍しく素直なキミを見るのが好き。
俺は黙ってゆっくりと里奈の顔に顔を近づける。
そしてチュッっと音を立ててキスをした。
また、ゆっくり顔を放しながら目をあければ少し顔を赤くしたいつものキミがいる。
それがなんだか可笑しくて、少し笑いながらキミの耳元でつぶやいた。
「……どういたしまして」
そうしたらキミは赤い顔のまま
「別に当然のことでしょ!」
「クスッ」
そんな里奈が可笑しくてまた笑った。
それが気に入らなかったのかキミはまたいつもの台詞。
「文句あるの?」
「別に?」
彼女は女王様だけどそんなことはない。
俺はキミの笑顔のために今日も頑張ろう。
嬉しそうな顔を見るために。
「あ、後でいつもの雑誌買っといてね」
……やっぱり女王様だけど。
そんなキミが好きな俺は重傷なのかもしれない。
(つうか、いつもの雑誌ってどの雑誌だよ!?)
Fin