私と博士と日常と
今日も自分の腕の中でスヤスヤと眠る彼女―サリア。
思い返せばそれはここ最近は特に多いような気がしてならない。
―彼女が…来るからだな。
サリアは毎日のようにベルフォアの家に遊びに来ては泊まって帰る。
ほとんど同棲しているような状態だった。
―自分の腕で眠る彼女に視線を下ろし少しあどけない寝顔を眺める。
今日は少しやりすぎたか…。
心の中で無理をさせてしまったことを少し反省する。
昼間から今まで一時も離さなかったのだ。
体力も持たないのは当たり前だろう。
―…昨日、彼女は来なかった。
それは前々から聞いていたし、知っていた。
学生時代の友達が来るためだと聞いていたのだ。
だから、研究のための道具を買いに珍しく街に出た。
彼女はいつもいつ来るか解らなかったため家で彼女が来るのを待っていたのだ。
だが昨日は来ないことが解っていた。
だから買い物に行ったのに―…あんな物を見た程度で“嫉妬”してしまうとは…。
我ながら情けない…。
見た物は彼女にとっても相手にとっても軽い物だった筈だ。
何てことはない。
自分が見たのは丁度会った時だったのだろう。
感動の再会と言った所か、サリアとその友人らしき人物達はしゃぎ抱き合い、頬にキスを落としあっていた。
タダの挨拶。
―そこに男も居た。タダそれだけ。
それだけで自分は今日酷く嫉妬し彼女を独占し続けていた。
―言い訳ではあるが、彼女はその男友達の頬にもキスを落としていたのだ。
それに気持ちが入っていないのは知っている。
だが―…、彼女は自分から僕にキスをする事があまりない。
…それが頬であっても。
それが…、自分を好いて居るからこそ恥じらいからできないことも知っていた。
しかし、それをいとも簡単に他の男にする事が許せなかった。
気持ちが無かったにせよ、だ。
だから今日、サリアの性格を計算に入れた上で彼女からキスをするよう仕向けた。
わざと突き放すような事を言って。
―本当に情けない。子供のような独占欲。
「……んー、」
横で小さく鳴いた彼女の頭を撫でると気持ちよさそうに僕の手に頭をすり寄せてくる。
その様子に目を細め、頬を撫でる。
―君は知らないんだろう。
いつも僕が嫉妬していることを。
君は、惜しげなく誰にでも優しく笑顔を振りまくから。
君の周りの物すべてに嫉妬していると言うことを。
君は知らない。
「……ベ、ル……」
「サリア…」
君は何も解っていないんだ。
君が僕の名を呼ぶたびに感情があふれ出してしまいそうになることを。
―僕は眠るサリアの唇に優しくキスを落とした。
あまつさえ、君が好きなんだ
(君が思っているより何倍も僕は君に溺れていると言うのに)